病院薬剤師と処方箋

日々の処方鑑査や患者さん、お医者さんから質問されたことを自分なりに調べてアウトプットするブログです。

ダイアップについて勉強した

 昨日は外来も院内処方で出さなきゃいけない日だったので普段接しない小児科処方祭りでした。

そんな中、熱性けいれんに対してダイアップが処方されていました。

電子カルテには「ダイアップ2回法」と記載されていました。

今日は熱性痙攣とダイアップについて日経メディカルに書いてあったのでまとめたいと思います。 


【熱性痙攣とは?】
・熱性痙攣:⽣後6カ⽉〜5歳の乳幼児が、38℃以上の⾼熱を出したときに起こす痙攣のうち、原因疾患が明らかではないものを指す。
⼤半は5分以内に治まり予後良好だが、痙攣が持続する場合には注意が必要.

ダイアップの効果発現時間】
ダイアップは投与後15〜30分で有効⾎中濃度に達する

ダイアップを使うときの注意点】
・副反応があるため、熱性痙攣の再発予防⽬的でルーチンに投与する必要はない(「熱性けいれん診療ガイドライン2015」より)
・熱性痙攣が15分以上持続したことがある⼩児は発熱時の予防投与がガイドラインで推奨されている
・初回投与から8時間後に2回⽬を投与すると24時間有効濃度域が維持できる

ダイアップの用法・用量は投与するタイミング】
・用量:1回0.4〜0.5mg/kg(最⼤10mg)を挿肛
・37.5℃を⽬安として、1回目を挿肛し、発熱(筆者の先生は38℃以上を目安にしている)が持続していれば8時間後に同量を追加する

ダイアップの主な副作用】
・ふらふらして寝てしまう、ずっとうとうとしている、起こしても起きない、興奮状態など。

ダイアップを使ってみて副作用が出たとき次回、処方時に提案すること】
ダイアップを使ってみて副作用(ふらふらして寝てしまう、ずっとうとうとしている、起こしても起きない、興奮状態など)が出た場合は投与時間(=延長)や量の調節(=減量)を提案していく。



今日は病棟が大荒れでした。5人退院して6人入院するとか。

なんだそれ!!



ナウゼリン坐剤とアンヒバ坐剤の併用について

 今日は胃腸炎の小児科の子に服薬指導を行いました。

 

処方箋の内容としては

ビオフェルミン

ナウゼリン坐剤

アンヒバ坐剤

 

お母さんから「先生から家に帰ったらすぐに吐き気止めの座薬を使ってくださいと言われました。今、熱が39℃あります。一緒に使ってもいいんですか?」と質問されました。

 

ナウゼリンとアンヒバを同時に使用すると効果が弱まるというのは知っているのですが毎回、どっちが先でどれぐらい間隔をあけるんだっけなと混乱してしまうんですよね。

 

で、少し時間をいただいて調べたところ

ナウゼリン→30分あけて→アンヒバ

 

そうそう。ナウゼリンが先だと思いだしお母さんにお伝えしました。

 

どうせだしもう少し深堀りして勉強してみようかなと思い勉強してみました。

 

まず、なぜナウゼリンを先に入れてアンヒバを入れるのかという理由を書いていきます。( 沖縄県薬剤師会のHPからの抜粋です)↓

 解熱剤の坐薬には油脂性の基剤(薬を溶かし込んでいる部分)が使われています。一方、吐き気止めの坐薬の成分は、油に溶けやすい性質を持っています。
ですから解熱剤の坐薬を先に使うと、後から入れた吐き気止めの成分が、解熱剤の基剤に取り込まれてしまいます。
その結果、吐き気止めの薬の吸収が遅れ、効果が弱まってしまうおそれがあります。
まず最初にナウゼリン®坐剤を入れ、その後30分以上待ってからアンヒバ®坐剤を使って下さい。

 

水溶性性基剤→30分あけて→油脂性基剤の順番ということですね。

 

キョーリン製薬から出されているドクターサロンには以下の内容もありました。

 

・基剤が一緒だったら薬効から考える

→緊急を要する坐剤(熱性痙攣時の抗痙攣薬(ダイアップなど)、喘息の薬(アルビナなど)、吐き気止め(ナウゼリンなど)などどうしても効果が大事なものをまず最初に入れる→次に解熱剤(アンヒバなど)とか抗生物質を入れ、下剤の坐剤は最後にします。

 

・坐薬が何性なのかと見分け方↓

油脂性のもの:基剤にハードフット

水溶性のもの:基剤にマクロゴール

と書かれていることが多い

 

今日も勉強になりました。

 

 

 

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ワソラン注について調べてみた

 今日は先生からワソラン注をどれぐらいの間隔をあけて1日何回まで使用してよいのかと相談があり「循環器診療 レジデント・ザ・ベーシック」で調べたので書いていきます。

 ちなみに添付文書上は下記の通りにしか書いてないです。

「通常、成人には 1 回 1 管(ベラパミル塩酸塩として5 ㎎)を、必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖注射液で希釈し、 5 分以上かけて徐々に静脈内に注射する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」

 

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・総量は10mg/日(=2A/日)程度にとどめる

・習慣的にSBP:100mmHg程度が保たれていることを確認してから投与

(ただし、心エコーでEFが保たれているようなら100mmHg以下でも投与することがある)

・ワソラン1A(5mg/A)を生食10~20mlに溶解→2.5~5mgを緩徐に静注→心電図、血圧をモニターしながら投与を行い、効果が乏しければ15~30分毎に追加投与を行う

・ワソラン2.5~5mgを生食50~100mlに溶解、30分程度かけて点滴静注→心電図、血圧をモニターしながら投与を行い、効果が乏しければ15~30分毎に追加投与を行う

 

P.471

アンカロン、シンビットを調べてみた⑥

 続きを書いていきます。

 

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【アンカロン錠の維持量】

副作用の頻度は維持量と投与期間に比例する

→有効性を維持しながら最低限の用量を目指す

(筆者の先生が目指している最終的な維持量↓)

心房細動:50mg/日程度

心室頻拍(VT):100mg/日程度

埋込み型除細動器(ICD)拒否例の代替療法:200mg/日程度

P.192

 

【心房細動に対するアンカロンの試験】

AF-CHF試験

試験対象:低左心機能(EF<35%)の心房細動患者

結果:アンカロン投与群とレートコントール群で有効性は同等だった

P.184

 

【ICD埋込み患者とアンカロン

OPTIC試験

試験対象:ICD埋込患者

結果;β遮断薬単独よりもβ遮断薬+アンカロンのほうがICDの作動を抑制できた

P.184

 

 

【心臓手術周術期にアンカロン予防投与】

アンカロン錠10mg/kg/日を術前6日から開始、術後6日(OPE日を含む13日間の投与

(↑予防投与を行うことで心臓手術後の合併症として一般的な心房頻拍の発生率をプラセボに比べ優位に下げたという報告あり)

補足)心房頻拍:心房細動と心房粗動

P.185

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/418899.html

 

(感想)

 当院には心臓外科がないのでアンカロンを予防投与することはないですが疾患毎(心房細動、心室頻拍(VT)、埋込み型除細動器(ICD)拒否例の代替療法)にアンカロンの維持量の目安があると知れたのはとても勉強になったなーと思いました。(添付文書には疾患毎の用量は記載ないです)

 

 

アンカロン、シンビットを調べてみた⑤

 続きです。

 

 

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【アンカロン甲状腺機能障害の対応】

・アミオダロン誘発性甲状腺中毒症(AIT)、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症を起こす。(頻度は甲状腺機能低下症が多い)

 

・TSHの上昇について

投与開始の一時的なTSHの上昇:経過観察で問題ない

投与開始から1~2年で徐々に上昇する、TSH高値を維持する:甲状腺ホルモン補充療法を行う

 

甲状腺ホルモン補充療法)

TSH:10~15μU/日未満になるように甲状腺ホルモンを補充

心不全患者や高齢者では甲状腺ホルモン12.5μg/日からの慎重投与が望ましい

 

 

(アミオダロン誘発性甲状腺中毒症)

甲状腺中毒症

AIT(Ⅰ型)

(バゼドウ病の顕在化)

AIT(Ⅱ型)

(破壊性甲状腺炎による)

病態

甲状腺ホルモンの過剰な産生分泌

貯蔵された甲状腺ホルモンの過剰な漏出

FT4

高値

高値

TSH

低値

低値

抗TSH受容体抗体

陰性~陽性

(バゼドウ病では陽性)

通常陰性

(弱陽性のことあり)

治療(軽症)

甲状腺

経過観察

(FT4:2~4ng/dL)

治療(中等~重篤

甲状腺

副腎皮質ステロイド薬(※)

不整脈が出現したり、FT4高値)

※PSL 0.5mg/kg/日程度を投与する:インターロイキン(IL)-6を抑制する目的で投与する

 

【アンカロン+ワーファリン、ジゴキシン

ワーファリン、ジゴキシンと併用する場合はワーファリンやジゴキシンの作用が増強するためワーファリンやジゴキシンを2/3量~半量に減量することが望ましい

P.192

Vassallo P,et al:JAMA,298(11):1312-1322,2007.

 

(感想)

 間質性肺炎に対してPSLを投与するっていうのは知っていましたが甲状腺中毒症(AIT(Ⅱ型))にPSLを使用するっていうのを知りませんでした。(むしろ「甲状腺中毒症」っていう病名を知りませんでした。ごめんなさい)

 

 また、ワーファリンやジゴキシンとの相互作用についても勉強になりました。ジゴキシンとアンカロンを併用するかっていうとあんまりないのではないかと思うのですがワーファリンとは併用することありえると思いますし、減量の目安まで書いてあったのでとても勉強になりました。

 

アンカロン、シンビットを調べてみた④

 今回はアンカロンの副作用に対しての対策をいつもの本で学んだので書いていきます。

 

 

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【アンカロンによるQT延長の対応】

QTc>550msec以上:一時的に減量や電解質の補正を行う

QTc>600msec以上:内服の中止&入院での電解質異常の補正

P.192

 

【アンカロンによる肺障害の対応】

自覚症状(咳、痰・感冒症状など)、KL-6>500U、%DLcoの15~20%の低下がある

→胸部X線や胸部CTを施行して間質性肺炎の有無をチェックする

間質性肺炎があるようなら以下の治療を行う

軽症:アンカロンの減量や中止

中等度:0.5~1mg/kgのPSL

重症:ステロイドパルス療法

P.192

 

(感想)

 アンカロンを点滴と内服薬を併用していた時にQTが延び気味になったところを見たことがありますが1回だけです。

 間質性肺炎に関しては見たことないですね。リウマトレックスで間質性肺炎になった患者さんは見たことがあります。多分、アンカロンだからとかリウマトレックスによる間質性肺炎だからということでPSLの量は変わらないと思うのでとても勉強になりました。

 

 

アンカロン、シンビットを調べてみた③

 続きを書いていきます。

 

 

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【アンカロンの副作用チェック】

・房室ブロック、QT延長がないかを確認

・3か月ごとにKL-6を測定

・可能であれば1年ごとに呼吸機能検査(%DLcoを含む)を行う

・3か月ごとにTSH、FT-4(±FT-3)を測定

・角膜への色素沈着はほぼ全例で認める(ただし、通常は無症状。マレに視覚障害、光線過敏症、視神経炎などを認めることがある)

・肝障害(低用量では起こりにくい。経口よりも注射薬で起こりやすい(注射薬の溶媒に含まれるソルベート80による影響が大きいと考えられている))

・ワーファリン、ジゴキシンと併用する場合は注意

・副作用の頻度は維持量と投与期間に比例する

→有効性を維持しながら最低限の用量を目指す

P.185、192、195

 

(感想)

 アンカロンの副作用と言われると真っ先に間質性肺炎甲状腺機能異常症、QT延長が頭に浮かびますよね。ただ、肝機能異常って私はなんかあんまりピンと来なかったんですが注射薬の溶媒が影響している可能性があるんですね。勉強になりました。

 

 

 

アンカロン、シンビットを調べてみた②

 今日はVT/VFの第一選択薬の残りの1つ・シンビットを勉強したので書いていきます。

 

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【シンビットについて】

・陰性変性がない

・腎排泄型のため腎機能低下患者には使用しづらい

・シンビットのQT延長は劇的(モニターしたで注意深い観察が必要)

(↑アンカロンのQT延長は軽度)

・シンビットは即効性が期待できる

目の前で頻回の発作を起こしている状況ではまずシンビットの単回静注療法を行う

 

・用法・用量

①添付文書に書いている用法・用量↓

単回静注法:0.3mg/kg/5分→維持静注法:0.4mg/kg/時

 

②本で推奨している用法・用量

→もともとのQT時間や腎機能に応じて添付文書に書いている用法・用量の半量程度から投与

単回静注法:0.15mg/kg/5分→維持静注法:0.2mg/kg/時

P.181、シンビットHP

 

【シンビットの副作用対策】

シンビット使用時は心電図をつけQTをモニターする

・心電図モニターあるいは12誘導心電図で維持静注中にQT=500msecあるいはQTc=550msec程度に延長し、かつ治療対象不整脈が抑制されている場合は減量ないしは中止を考慮する。

・同一の点滴量を投与していても、突然にTdPが出現することがあるので、心電図モニターの監視を継続する。

⑤T波形の変化やQTcの顕著な延長(QTc>600msec)、かつ新たな心室性期外収縮の多発が認められた場合には、速やかに一旦中止する。

P.42、シンビットのHP

 

(感想)

 当院にもシンビットは採用しており在庫もおいてありますが1回も触ったことないです。本には詳しくは書いてなかったですがアンカロンとシンビットの使いわけってどうやってやるんですかね?本に書いてある内容を加味すると速効性を期待するならシンビット、安全性をとるならアンカロンって感じですかね?あとは肝臓や腎臓の状態でも使いわけができるのかな?

 

 

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アンカロン、シンビットを調べてみた①

 今日はVT/VFの第一選択薬のアンカロンについて調べたので書いていきます。

 

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【アンカロンについて】

・マルチチャネル遮断薬(急性作用と慢性作用が異なる)

急性作用(注射薬):QT延長効果は認めにくい

(↑Naチャネル遮断作用とCaチャネル遮断作用が全面に出てくるため)

慢性作用(経口薬):QT延長が出現する

(↑Caチャネル、β受容体、Ifチャネル抑制作用などの徐拍化効果によってQT延長が起きる)

・心機能低下例にも使用可能&肝代謝型のため腎機能低下患者にも使用可能

・アンカロンのQT延長は軽度(シンビットのQT延長は劇的)

・アンカロンはシンビットと比較して速効性はない。

・アンカロンはシンビットに比べtorsade de pointesを起こしにくい

・心臓手術周術期にアンカロンの経口薬を予防投与することで心房細動・心房粗動が減少することが報告されている

・アンカロン血中濃度はアミオダロンとデスエチルアミオダロン(DEA:アミオダロンの活性代謝物)の合計で2.5μg/mlを超えないようにする

・急速投与:125mg/10分→負荷投与:50mg×6時間→維持投与:25mg×42時間

 

P.181、183

 

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  当院ではアンカロンを扱うことがほとんどないのでとても勉強になりました。アンカロンの作用に急性作用と慢性作用があるなんて知りませんでしたし、何よりイメージとして経口薬より注射薬のほうがQT延長が起こりやすいのかなと思っていたので意外でした。

 また、アンカロンって毒薬に分類されるじゃないですか?なので心機能低下例には使用しづらいのかな、腎機能でも調節が必要なんだろうなと思っていたら真逆でしたね。

 

ただ、注射薬の用法・用量覚えるの難しいですよね。

 

うちの病棟ではアンカロン注の棚に用法・用量が書かれた表が置いてあり、必要時にチェックできるようになっています。

 

 

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VT/VFを調べてみた②

 続きを書いていきます。

 

 

 

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【VTとⅢ群治療薬】

・VTの多くはリエントリーが原因

・Ⅲ群治療薬は心室不応期の延長によりリエントリーを停止させることで抗不整脈効果を示す

P.181

 

【VT/VFの治療】

第一選択薬:アンカロン、シンビット

(アンカロンは内服薬と注射薬両方あるがシンビットは注射しかないため内服切り替え時にはソタコール(←シンビットと同じKチャネル遮断薬)が処方されることが多い)

P.181

 

【アンカロン、シンビットの併用について】

アンカロン、シンビットどちらか1剤が無効の場合にはQT時間に注意しながらアンカロン+シンビット療法を検討する。(ただし、この2剤の併用は添付文書上、禁忌)

P.181

 

【アンカロン、シンビット+オノアクト】

Ⅲ群抗不整脈抵抗性の難治性VT/VF患者にⅢ群治療薬+オノアクト(←5γ程度)を投与すると79%でelectrical stormを回避したという報告がある

P.182

 

アンカロンとシンビットを併用するなんて初めて知りました。

まぁでも当院では併用するようなことはない…

と願いたいです。

絶対、もめるから。

 

 

P.S今日は大雨で雷もゴロゴロ鳴っていました。

泣くかなーと思っていましたが娘は全く泣きませんでした。

 

 

 

 

感染性心内膜炎について学んだった⑥

 続きです。

 


 

【感染性心内膜炎と合併症】

IEは血流にのって全身に菌が回る→全身の臓器への感染症を引きおこす可能性がある。

→痛みを訴える部位は常にその部位の膿瘍性病変がないかを画像チェック

・心臓への感染なので循環動態への影響がある合併症を引き起こす可能性がある

心不全くも膜下出血

 

臓器

IEの合併症

補足説明

心臓

・うっ血性心不全

・弁破壊に伴う弁逆流

・疣贅による流出路閉塞

・弁周囲膿瘍、心筋膿瘍

不整脈(房室ブロック、脚ブロック)

心外膜炎心筋梗塞

・新たに出現した心電図異常は心筋深層への感染の波及を示唆する。

中枢神経

脳梗塞

・感染性脳動脈瘤

くも膜下出血

(↑頭蓋内の末梢動脈の感染性動脈瘤の破綻が原因)

・脳膿瘍、髄膜炎

・神経所見の有無に注意する

・治療開始後でも急な意識障害で発症することがある。

・頭蓋内動脈瘤は破裂した場合、極めて死亡リスクが高い。

★中枢神経合併症抗菌薬開始後も起こりうるため、IEでは抗菌薬開始後に少しでも

神経症状を訴えた場合、積極的な画像検索が重要!!

動脈瘤

・感染動脈瘤

(腹部大動脈、腸管膜動脈、腎動脈、Valsalva洞など)

・治療開始後の急なショックバイタルでは常に考える。

腎臓

・免疫現象による腎炎

・腎梗塞(感染性塞栓による)

・薬剤による腎毒性

・腎機能悪化時には感染に伴うものか薬剤性かは判別不能であり、薬剤性として対応するしかない。

転移性病巣

(局所の化膿性疾患)

・骨髄炎

・硬膜外膿瘍

・脾膿瘍

・筋肉内膿瘍(腸腰筋膿瘍含む)

・化膿性関節炎

・痛みを訴える部位の画像検索は必須。

・それにより治療期間も変わる。

・ドレナージしない膿瘍性病変の治療期間は画像での消失までである。

 

P.140、143、144

 

IE心不全

心不全IEの中で最も多い死因の1つ。緊急手術も多い

(↑弁への感染による弁破壊で疣贅による)

P.143

 

IE心筋梗塞

・疣贅による冠動脈塞栓で心筋梗塞になることもある(ただ、マレ)

P.143

 

IEで膿瘍性病変をしっかり確認する理由】

◎下記の「症状が改善しない」「治療期間が変わってくる」という2つの理由があるため

・膿瘍性病変があればドレナージしないと痛みなど症状が改善しないことが多いから

・ドレナージしない膿瘍性病変の治療期間→画像での消失まで

IEとしての4~6週間治療が終わったから終了というわけではない)

・転移性病巣の膿瘍性病変は初期には画像上ははっきりしないことがある

・初期から痛みがあるけれども入院時の画像でははっきりしなかったのに繰り返し撮って出てくることもある

(初期に痛みがなくて後ほど出てくるといった経過ではない)

P.143、145

 

 

【感染性心内膜炎を疑う条件】

・心臓の基礎疾患のない若年者の心不全→珍しい。IEからの心不全になってないか確認

・不明熱→IEを疑う

・原因不明の心不全IEを疑う

P.142

 

IEの合併症治療】

・骨髄炎合併:IEよりも治療期間が長くなる。

・中枢神経合併:抗菌薬を中枢神経ドーズに増やす必要がある(用量がIE用量を超えることもある)

P.150

 

【中枢神経系への移行性】

中枢移行性が良い:CTRX、ABPC

中枢移行性が悪い:VCM、CEZ

(SBT/ABPCはSBTの髄液移行性のデータに乏しい)

P.150、151

 

IEに中枢神経合併症がある場合の治療(心内膜炎+髄膜炎ドーズ)】

MSSAの場合

 

1.CTRX2g×2±15mg/kg×2

2.MEPM2g×3

3.CFPM1g×3

(※人工弁の場合はRFP900mg/3×の併用を検討)

MRSAの場合

VCM15mg/kg×2

(人工弁の場合にはGM3mg/kg×1+RFP900mg/3×の併用を検討)

※MEPM:治療効果は期待できる可能性があるが長期使用になることを考えると避けたい。

P.151、レジデントのための感染症マニュアルP.649

 

IEの治療期間~弁置換術を行われた場合~】

・弁置換術が施行された場合、自然弁と同じと扱う。

→治療期間は4~6週間(適切な抗菌薬開始日から起算して)(←手術日をday1とする必要はない)

(※ただ、手術時に採った弁培養が陽性の時のみ手術日をday1とする)

P.151

 

IEは長期治療になる】

抗菌薬長期使用では原疾患の治療がスムーズに終了することのほうが珍しい

抗菌薬による副作用は必発(CDIなど)

薬疹が出た場合は適切な抗菌薬への変更などを迅速に対応する

感染性心内膜炎について学んだった⑤

 続きです。

 

 


 

【菌名・感受性結果が分からない3つの状況】

  • 適切に培養を提出していて、結果が判明する前に抗菌薬を提示する場合
  • 先行する抗菌薬使用のため、培養で菌が検出されない状況で抗菌薬を提示する場合
  • 適切に培養を提出していて、最終的に培養が陽性にならない場合

P.133

 

IEの経過観察】

・血液培養陰性化が治療効果判定としては重要!!

・解熱するのに1週間程度(5~10日)

★大切なのは「手術の適応」と「手術のタイミングの判断」を見誤らない

心不全合併例、菌血症コントロール不良例、疣贅が10mm以上ある場合は手術を検討

P.134、136

 

IEの治療期間~合併症がない場合~】

★合併症がない場合

・血液培養陰性化を確認した日を1日目とする。

→自然弁の場合:4~6週間

→人工弁:6週間以上

※連鎖球菌の場合、GMは2週間で終了

P.134

 

IEにおける陰性再確認の間隔は?】

・特に決まっていないが亀田総合病院のHP見ると2~3日毎となっている。

・本書でも開始72時間での血液培養フォローしている。

P.136、参考:亀田総合病院HP(第4期KINDセミナー:講義1「感染症総論」質疑応答

感染性心内膜炎について学んだった④

 続きです。

 


 

【感染性心内膜炎のエンペリック治療】

IEでは「培養途中経過判明前」というのは少ない(←IEの診断には血液培養陽性が基本だから)

IEで血液培養陽性前から治療するのは「先行する抗菌薬の影響で培養が生えてこない+心不全など合併していて重症の場合」

→このようなケースでは自然弁でもVCM+GMも致し方ない。(ただ、長期投与による腎機能障害は必発なのでできれば避けたい)

P.132

 

【どうしてもグラム染色のみからIEの抗菌薬治療をする場合】

 

連鎖球菌様のグラム陽性球菌

CEZ2g×3(←医療暴露歴があればVCMに切り替え)+GM3mg/kg×1

P.135

 

 

IEの培養最終結果判明後の抗菌薬】

連鎖球菌(Viridans streptococcus、bovisなど)

ペニシリンのMIC<0.12μg/ml)

1.  PCG 300万単位×6

2.  PCG 900~1000万単位×2(持続点滴)

3.  ABPC 2g×4

4.  ABPC 3g×4(持続点滴)

連鎖球菌(Viridans streptococcus、bovisなど)

ペニシリンのMIC:0.12~0.5μg/ml)

1.  PCG 400万単位×6+GM 3mg/kg×1

2.  PCG1200万単位×2(持続点滴)+GM 3mg/kg×1

3.  ABPC 2g×6+GM 3mg/kg×1

4.  ABPC3g×4(持続点滴)+GM 3mg/kg×1

MSSAの場合(自己弁)

CEZ 2g×3±GM 3mg/kg×1

MSSAの場合(人工弁)

CEZ 2g×3±GM 3mg/kg×1+RFP900mg/3×

MRSAの場合(自己弁)

VCM15mg/kg×2±GM 3mg/kg×1

MRSAの場合(人工弁)

VCM15mg/kg×2±GM 3mg/kg×1+RFP900mg/3×

腸球菌(ABPC感受性(+)+GM感受性(+))

ABPC 2g×6+GM 3mg/kg×1

腸球菌(ABPC感受性(-)+GM感受性(+))

VCM 15mg/kg×2+GM 3mg/kg×1

※連鎖球菌のMICによってPCG、ABPCの用法・用量が異なるので注意!!

GM黄色ブドウ球菌、腸球菌のある程度の活性があり、β-ラクタム系などと併用される

GM緑膿菌を含む多くの好気性グラム陰性桿菌がメインのターゲット

GM:腸球菌感染症にはペニシリンやVCMといった細胞壁に活性のある抗菌薬との併用が必須

GM:腸球菌感染症に使用する場合はMIC<500μg/mlを確認してから使う(耐性の場合は使用できない)

※連鎖球菌がIEの起因菌の場合、PCGが基本。

※PCG:100万単位あたりK:1.68mEq入っている。末梢から投与する場合は濃度:40mEq/L以下、投与速度:20mEq/hr以下となるようにする。静脈炎に注意!!

※PCG:感染性心内膜炎の量を使用するとそれなりのボリューム負荷になるので注意

※ABPC:室温で不安定。持続点滴には不向き。ただ、生理食塩液に溶解。6時間毎の持続点滴は可能(ブドウ糖は3時間で85%まで活性低下してしまうので不向き)

P.133、138、レジデントのための感染症マニュアルP.144、151、P.649

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感染性心内膜炎について学んだった③

 続きを書いていきます。

 

 


 

 

【感染性心内膜炎の起因菌】

起因菌

頻度(%)

緑色連鎖球菌

33.3

黄色ブドウ球菌

21

その他の連鎖球菌

18.6

コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)

11.3

腸球菌

9.8

酵母様真菌

HACEKグループ

※HACEK:インフルエンザ菌、アグレゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス、カーディオバクテリウム・ホミニス、

エイケネラ・コローデンス、キンゲ

P.130

 

 

【状態とカバーする菌】

IE+バイタルが不安定or心不全合併例→黄色ブドウ球菌(医療暴露歴次第ではMRSAも考慮)は絶対にカバーを外さない。

(↑黄色ブドウ球菌は破壊性が強い性質がある)

・腸球菌は頻度が低い&弁が自然弁の場合→ルーチンで腸球菌カバーはしなくてもよい。

IE+バイタルが不安定or心不全合併例→腸球菌までのカバーも検討しても良い(通常、頻度は低いが)

IE+全身状態良好+連鎖球菌+疣贅が大きくない→菌名・感受性結果がわかるまで抗菌薬投与をまつということも可能。

P.131、135

 

P.S今日の病棟は比較的落ち着いていました。

 


 

 

 

感染性心内膜炎について学んだった②

 続きを書いていきます

 


 

【感染性心内膜炎の症状】

感染性心内膜炎で認める症状・所見

頻度(%)

38℃以上の発熱

96%

新規の心雑音

48%

既存の心雑音の増悪

20%

血管の塞栓症状

17%

爪下の線状出血

8%

手掌・足底の出血斑

5%

結膜点状出血

5%

Osler結節

3%

眼底の出血

2%

 

・熱のみ感度が100%近い(=熱以外の症状はどれも感度が低い)

・非特異的な筋骨格系の症状は50%程度で認める(=ただ,リウマチ性多発筋痛症と誤診されることが多い)

→痛みを訴える部位を積極的に画像検索(膿瘍などの感染巣)し、誤診を回避する。

IEの転移性病巣の存在がないか造影CTでの確認が望ましい。

(↑膿瘍性病変があった場合には治療期間、ドレナージの必要性も考慮する)

P.129、137

 

【感染性心内膜炎と血液】

・血液検査でIE特有のものはない。

→通常の敗血症の指標である臓器障害(腎機能障害、肝機能障害、血小板減少など)の有無を確認

P.129

 

【感染性心内膜炎と細菌検査結果】

 

感度(%)

特異度(%)

経胸壁心エコー(TTE)

44~63

91~98

経食道心エコー(TEE)

87~100

91~100

 

・TEE:感度、特異度ともに高いが施設になかったり、侵襲度などを考えると毎回できるものではない。

→「TTEでIEを疑うが確定できない場合」、「人工弁」、「心内デバイスがある」場合などに行うのが現実的。

・1回の心エコーで異常がない場合でも1週間程度で再検するなど繰り返すと見つかることもある。

P.130、138

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